そういうと、皆さん「良いとことだよね」とか「食べ物が美味しいよね」とかと言ってくれます。
僕も確かにそうだとは思うのですが、実感は持てません。
もっと言うと、僕自身も、誰かに出身地を教えられたらどこ出身の人に対しても同じように「良いとことだよね」とか「食べ物が美味しいよね」とか、言うと思います。
まあ、人はそれくらい適当に会話しているということでしょうか?
しかし、僕が自分の故郷について上手く語れないのにはもう一つ理由があります。
僕が、札幌にいたのは、高校を出て、一年間浪人していた18歳まで。
その後は、大学のある大阪に引っ越ししてしまい、札幌に帰る機会は現在まで年に1回あるかないかという感じです。
これを読んでいる皆さんにも、経験があるかもしれませんが、高校生までの視野なんて、自分の立っている半径5mくらいまでが精一杯で、美味いモノなんて、学校帰りによる喫茶店程度のモノです。
なので、僕の北海道で一番美味いと思う料理は、札幌市澄川駅前のシェーキーズ澄川店のフライドポテトです。
中学高校の頃、良く学校帰りにここのシェーキーズに寄って、食べ放題を注文し、山盛りのフライドポテトを腹一杯食べた覚えがあります。
いやぁ、まだジャガイモで良かったですね。北海道っぽいですから。
もちろん、高校を卒業して浪人してた頃も殆ど同じような生活で、いや、よりぐうたらな生活でした。
予備校の出席カードだけ通して札幌の西武五番館というデパートに入っていたレコードショップ「WAVE」か「タワーレコード」で、スケートリンクの製氷のバイトで稼いだ金をつぎ込んで何十枚もCDを買っていました。
欲しいCDが見つからない時は、時間をつぶすためにそんなに観たくもない映画を1日に何本も観あさっていました。
一度、「こんな生活じゃいけない!」と思って、一念発起して予備校の夏休み模試を受けるため家を出た日、気がつくとまた映画館にいました。
29席しかない、この当時日本一小さな映画館だった「シアターキノ」(今は移転してもう少し大きくなっているそうです)で、当時デビューしたばかりの佐伯日菜子さんが主演している邦画を観ました。
タイトルは「毎日が夏休み」。
まさに僕のことでした。
僕の札幌の思い出なんてそんなモノです。
ということで、僕にとっての札幌のグルメは「シェーキーズ澄川店」のフライドポテトで、名所といえば、今はもうない日本一小さな映画館です。
最近は、なかなか北海道に帰る機会もありませんが、今度、行ったときには、僕の中のグルメと名所をまわってみたいと思います。
伊福部崇